「助かった……」
乗員の皆がホッと胸を撫で下ろしたのも束の間、ボーイング747の窓から目撃したあの衝撃の光景が皆の運命を大きく変えてしまった。
我々を乗せたボーイング747は機体への損傷も少なく、海面への強行着水に成功した。
機長をはじめクルー一同は救難信号を送り続けたが、数日経てども全く救助も反応も無い。
それもそのはずだった……
全世界的に数日続いた大雨により、この世界は大洪水に飲み込まれ地表は姿を消してしまっていた!
この世界に我々だけを残し、あの懐かしき人々、故郷の山々は突然姿を消してしまったのだ!
かくも静かな、かくもあっけない終末をいったい誰が予想しえたであろう。
人類が過去数千年にわたり営々として築いた文明とともに、西暦は終わった……
しかし、残された我々にとって終末は新たなる始まりに過ぎない。
世界が終わりを告げたその日から、我々の生き延びるための戦いの日々が始まったのである。
偶然にも貨物コンテナは食料品、日用雑貨等の豊富なストックを誇っており、当然我々は、人類の存続という大義名分のもとにボーイング747をその生活の拠点と定め、ただただ荒れ狂う海を漂い続けた。
あの運命の夜からどれ程の歳月が流れたのか。
しかし今、我々の築きつつあるこの世界に時計もカレンダーも無用だ!
我々は、衣食住を保証されたサバイバルを生き抜き、かつて今までいかなる先達たちも実現し得なかった地上の楽園を、あの永遠のシャングリラを発見するだろう!!
ああ、選ばれし者の恍惚と不安、共に我にあり……
人類の未来がひとえに我々の双肩にかかってあることを認識するとき、めまいにも似た感動を禁じ得ない……
何故なら、このボーインング747こそが現代の「方舟」であり、我々こそが神に選ばれし新たなる「ノアの民」なのだから……
来たれ新世紀!
来たれ永劫の未来よ!!
我こそが、新世界の王となるのだ!!