……チョンチョン、テケチツ、チャカポコテンテン……
相変わらずのお笑いを申し上げます……。
熊八「へい、ごめんなさいよ。ご隠居、ちっとこれを見てくんねぃ」
大家「騒がしいねえ、誰かと思ったら熊八じゃあないか。
どうしました、熊が豆鉄砲喰ったふうな顔をして」
熊八「あっしはいま、そんなくすぐりを拾ってる暇はねぇんで。
見て頂きてぇのは、これ、この写真なんですがね」
大家「写真た、無粋だねえ。時代考証も何もありゃしない。せめて乾板」
熊八「七面倒臭ぇお人だな、じゃあそのカンバンでいいや。
ほらここ、ここン所を見ておくんなせぇよ。あぁ厭だ、ぶるぶる」
大家「ああ、毛むくじゃらのギョロ目がこっちを睨んでいるねえ」
熊八「そりゃ、あっしの顔だ。その後ろ、ほれ、肩の上、上。
ぼんやり顔みてぇなンが浮かんでるでがしょう」
大家「ああほんと。こりゃあ厭だねえ、
なんだか胸の悪くなるような写真だよう」
熊八「いま写真って言いなすったね、まあいいや。
兎に角だ、いっときも早く祓うなり焼くなり、
こいつをどうにかして貰いてぇんで。ああ、ひらひら」
大家「ひらひらさせるなよ、気色の悪い。ほんと呆れた熊野郎だね。
だからって、どうしてあたしン所に持ってくるんだよう。
こういうのはだよ、その筋の、専門家の先生さんへお願いして」
熊八「お願いしたともさ。そしたら先生、大家さんとこへ、って」
大家「専門家の先生がそんなまちがい、言いやしないよ」
熊八「言ったんだもの、仕様がねえ。ああ、ひらひら、ひらひら」
大家「こら熊八。
一言隻句を違えずに、じっくりとっくり思い出してごらん。
その先生とやらは、一体全体、何ておっしゃったのかね」
熊八「思い出すも何もねえ。大家さんにお納めして、御祓いしなさいよと」
大家「熊八、熊八。そりゃ、やっぱりお前さんの聞き違えだよ。
その先生はね、大家さんじゃなしに高野山、っておっしゃったのさ」
……チャカポコテンチツ、トテチツテン、テン……
子供「ヤクルトつえーなー」
祖父「いいかげんに携帯は仕舞いなさい健太、こら、健太……」