家来「殿 これが庶民の乗り物『バス』でございます」
殿様「なに これが庶民の乗り物『バス』なのか」
家来「はい」
殿様「よし ほうびをあたえる」
家来「ありがたきしあわせ」
殿様「この白い輪っかは何じゃ」
家来「これは『吊り輪』といって 体操競技の1つです」
殿様「これ」
家来「はっ」
殿様「余はそれくらい知っておる 馬鹿にするでない」
家来「大変失礼いたしました」
殿様「うむ」
(ブォン)
殿様「おお バスが走り出したぞ」
家来「殿 立ったままでは危険です 座席にすわりましょう」
殿様「しかし 座席はすべて庶民が占領しているようだが」
家来「心配御無用です バスには『優先席』というものがあります」
殿様「なんだそれは」
家来「殿が優先的に座れる席のことです」
殿様「余の威光はここにも届いておったか それはどこじゃ」
家来「ここでございます」
殿様「なぜここに老人が座っているのじゃ 余にはまったく理解できぬ」
家来「殿 ここはわたくしめにおまかせを」
殿様「うむ 任せたぞ」
家来「ご老人 この席は殿が座られる席なのだ 早急に明け渡せ」
老人「ああー?」
家来「早急に明け渡せといってるのだ」
老人「あー? ・・・あぁなんだ正夫かね もう終点かね 今降りるよ」
家来「さっ 殿 どうぞお座りください」
殿様「うむ しかしこんな汚いシートに余は座りたくないぞ」
家来「そう言われましても」
殿様「いいことを思いついたぞ 今すぐ一流の職人を呼んで作り直させろ」
家来「かしこまりました」
(トントン) (カンカン)
職人「完成しました」
殿様「うむ よくやった ほうびをあたえる」
職人「ありがたきしあわせ」
(次はー 錦糸町 次はー 錦糸町)
殿様「おお 余のためにアナウンスもしてくれるのか 運転手を呼べ」
運転手「何でございましょう」
殿様「ほうびをあたえる」
運転手「ありがたきしあわせ」
(ガッシャーン)
殿様「おお おぬしのおかげで死後の世界へ行くことができたぞ ほうびをあたえる」
閻魔「ありがたきしあわせ」