「よし、こうしよう。今から私と君が簡単なゲームをする。
もし君が勝ったら2倍の3960円払おう。もし僕が勝ったら……」
「いや、いいです。普通に払ってください」
「……。じゃあこういうのはどうかな。
次にこの店に入ってくるのが男か女か賭ける。もし男が来たら…」
「賭けません。払ってください」
「このバッグ、1万円で買ったんだけど1980円で売ってあげるよ」
「お支払いは現金でお願いします」
「……よしっ、しりとりで勝負だ! 僕からいくよ。
パンダ! はい、君『だ』だよ!」
「だめです」
「いくよ、じゃ〜んけ〜ん…」
「1980円になります」
「……。
すまなかった。実は、財布を忘れてきたんだ。
だから今は持ち合わせがないんだよ。勘弁してくれないか」
「お客さん、私はその言葉が聞きたかったんです。
そうやって正直に言ってもらえれば、こちらも怒ったりしませんよ」
「そうか……。はじめから素直に頭を下げていればよかったんだな。
俺はつまらない見栄を張って、本当に大事なことを忘れていたよ」
「そのとおりですよ。そう言ってもらえて、私もうれしいです……。
でも警察は呼びますよ」
「え!?」