●「俺もさ、やっぱりオセロ界なんていうちっちゃい場所にとどまってちゃいけない。もっと広い世界で勝負したいっていう気持ちがあってさ、体ひとつで将棋界まで繰り出してきたわけだよ。でも現実は違った。あれは4回目の対戦の出来事だった。俺は少しでも自分の存在を認めてもらおうと思って、果敢に攻め込んでいった。そしてなんとか敵の攻撃をかいくぐり、敵陣へと入っていった。ついに成ることができた俺は、喜びいさんで裏返った。そしたら香車の野郎なんて言ったと思う?あいつ『うわっ、白っ!しかも何も書いてねー』って言いやがったんだ。その時俺は思った。どんなに頑張ろうとも、俺の表面に何も書いてない限り、俺が木目調でない限り、認められることはないんだと。」
それから俺は将棋界を去り、アルバイトを転々とした。アンパンマンのチョイ役として登場したりもした。疲れ果てた俺は、田舎へ帰る決意を決めた。そのとき俺の前に一人の男が現れた。
ツクダオリジナル社員「お前どこいってたんだ。心配したじゃねえか」
それは、若いころ俺に世話をしてくれたツクダオリジナル社員だった。だが、俺は奴の好意を裏切って、オセロ界を抜け出してしまった。もはや合わせる顔がない。
●「すまない‥‥俺はもう田舎に帰ろうかと‥‥」
ツクダオリジナル社員「何言ってんだ。みんなお前のこと待ってたんだぞ」
●「え‥‥?」
ツクダオリジナル社員がカーテンを開ける。すると窓の外で大勢のツクダオリジナル社員達が、あたたかい拍手で迎えてくれているではないか。
●「みんな‥‥」
嗚咽が止まらない。こんなにも多くの人間が俺を必要としていたのに、俺は‥‥。
ツクダオリジナル社員「さあ、行こう」
かくして●はオセロ界へ復帰することとなった。●、48歳の秋。