10年ぶりに帰ってきてみれば、町はすっかり変わっちまった。
当時ガキだったころに有った建物は一つも残ってなくて、代わりにでっかいビル群が立ち並んでいる。
柿をかっぱらった(渋柿で食えたもんじゃなかったけど)ジジィの家も、当時の俺の家も。
あのころ無邪気に駆け回っていた補正されてない砂利道は立派な道になってその上を車やれバイクやれがエンジンを鳴らして走っている。
ここで俺は本当に育ったんだろうか……
「まー君?」
感慨に耽っている俺に、誰かが声をかけた。
「わぁ、久しぶりだねぇ〜」と嬉しそうにいった彼女が言う。「全然変わってないねぇ〜、私のこと覚えてる?」
「ああ、覚えてるよ、マキちゃん」
うれしそうに色々なことをまくし立てて喋る彼女は、当時と変わっていなかった。
いや、10年前よりもキレイになった。感覚が一気に10年前に戻る。当時の俺の気持ちも、一緒になって戻ってくる。
「とりあえず」俺は言った。「こんなとこで突っ立ってるのもなんだから、どっかで飯でもくわねぇ? 奢るよ?」
「ホントに? じゃあ私お薦めのおいしいところで食べない?」
「上手いところなら、賛成だな」
「よぉ〜し、それじゃあ参ろうっ、れっつごー」
何もかも変わっちまったこの町で、ニコニコと、当時と何も変わらない無邪気な笑みを振りまいて歩く彼女の後を俺は追った。
ここから、俺の新しい生活が始まる……
と、言う妄想を見るためのマシーン。