あの日は朝から雨が降っていた、仕事が終わりいつものバーへ入っていく。
いつもの様にマスターに軽く会釈をし店の奥のハンガーに上着を掛ける。
店の奥に一つだけあるBOX席を見ると見知らぬ男が二人話込んでいた。
何故か分からないがその二人が気になりカウンターの一番近い席に座った。
最初のうちは僕の知らない町の話だったが途中から実家の在る町の話になった。
出来るだけ気付かれない様に二人の話を聞いた、そして僕は衝撃の事実を知る事になってしまったのだ。
なんと実家の在るD町に出来た100円ショップの店舗の屋上部分に
ある、かなり遠くからでも確認できる『100円』と書かれた看板が…、
いや看板だと思っていた物が、値札だったのだ!
その時のあまりの衝撃で途中の記憶が曖昧なのだが、気付くとその店の入り口で開店を待っていた。
そして時間が経過し店員が入り口を開けると同時にカゴも持たずにレジに並び店員に告げた。
「み、店をください。」
少しビックリしたような目で店員が口を開く
「有り難うございます、税込みで105円になります。」
その声はその日の天気の様に爽やかな声だった。