世界は突如、終わった。
都市という都市は水没した。予言にあった大洪水である。
人類に残されたのは荒れ狂う海と、動物達の生命を救うという使命を見事に果たしたノアの箱舟だけだった。
箱舟のおかげで生き長らえた者の中に『自動車とセックスしたオヤジ』がいた。
箱舟の帆先でその変態は誰とも無しに呟いた。
箱舟よ、俺を乗せるんじゃねぇ。
俺は乗る側だ。
俺を乗せる物は許さねぇ。
俺を乗せた物は何だって犯してきた。
どちらの立場が上か分からせる為にな。
ロバ、馬はもちろん、変わった所ではダチョウも犯した。
自動車だって俺の前では例外じゃない。
マフラーに突っ込んで屈伏させてやったぜ。
俺は乗る側だ。
箱舟よ、今に分からせてやるぞ。
意味不明で意味不明の決意から十数年、
念願叶って巨大化したオヤジは狂喜して箱舟を犯し続けた。
以前の世界は、荒れ狂う海とそこに浮かぶノアの箱舟だけだった。
しかし今はオヤジの狂信的なピストンのおかげで、
世界は、荒れ狂う海と上下動に揺れる箱舟へと変容した。
それから紆余曲折があり、人々は祈りによって『箱舟』を知の象徴である『本』へと変貌させる事に成功し、巨大な変態の狂った行為に打ち勝ったのである。
巨大な変態オヤジは死ぬまで、いや死んでからも『本』を男根に乗せ、大洪水が終わるまで支え続けたのであった。