ビンの中で過ごし始めて何日が経っただろう。この生活にも少しずつ慣れてきた。
そもそもなぜ僕がビンの中で過ごしているかというところから説明しよう。
僕の家の近くには、夜になると魔女が出ると噂の山がある。ほんの興味本位でその山に登ってみたのが悪夢の始まりだった。
色々あって遭難した僕はぐるぐると山を回り続けていた。すると一軒の小さな小屋を発見したのだ。
あそこに行けば人がいて助けてもらえるかもしれないと思った僕は魔女の噂のことなど忘れ、ドアをたたいた。
僕「すいませーん、だれかいますかー?」
するとすぐにドアが開いた。そこに立っていたのは一人の老婆だった。
僕「すいません、遭難してしまったので一晩泊めていただけないでしょうか?」
老婆「ヒヒヒ・・・好きな果物は何だい?」
僕「え・・・?そうですね、んんと、イチゴかなぁ。」
老婆「そうかい、・・・ハイヒャー!!!!!」
次の瞬間僕はジャムになっていた。しかもブルーベリー。
そう、実はこの老婆が噂の魔女だったのだ。
不気味な笑みを浮かべながら僕をビンに詰める魔女。
僕はというとジャムにされながらも意識はしっかりあるし、体に力を入れることもできた。
何よりなぜかテンションがあがっていた。
この現象を僕はブルーベリーマジックと名付けた。
とまあこれが僕がビンの中入ることとなったおおまかな経緯だ。
もちろん僕は何度も脱出を試みた。
全身に力を入れ、体を膨らませ、ビンの蓋を開けようとした.
しかし固く閉められたビンの蓋を開けるまでには至らない。そもそも蓋に届かない。チクショウ。
困った時は大声で助けを呼ぶのが一番だと思い、何度も叫んでみた。
しかし、この分厚いビンの外に声を届けることはできなかった。そもそも声が出ない。シット!
もうババアがパンに僕を塗って食べようとした時に走って逃げるしかない。
ジャムボディになってしまった今、走ることができるのか?ビンに詰められてる今は試しようがないしこうする他に逃げ出せる可能性はない。
ついに決心した僕はいつも以上においしそうな顔をした。自己評価は100点だ。すると効果テキメン、ババアがビンを手に取ったのだ。
余すところなく僕をパンに塗るクソババア。
ドキドキを抑えようと必死になるブルーベリージャム。
そしてイケメンをパンに塗り終えた老いぼれはコーヒーを入れに席を立った。
ついにこの時がやってきた。今しかない!
「グッバイマイビンライフ。オイラは風になる。」そう心の中で思いながら僕は全力で走りだそうとした。
「プルン」
少しだけセクシーに全身を震わせた僕は数分後、ババアの胃の中にいた。