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それは、彼とドライブにいった帰りのことだ。
「この辺でいいよ」
私の家の周りは細い路地で入りくんでいて、軽自動車が通るのがやっとだ。車は中途半端な位置で右寄りに止まった。
「今日はありがと」
私は、買ってもらったピアスに手を触れた。門限の夜十二時五分前、私が車を降りようとして、それと同時に、彼が何かしゃべろうとした時だった。
それは、突然の出来事だった。
タイタン
巨神タイタンだ
フロントガラスの向こうにタイタンが現れた。
ギリシャ神話のタイタンだ。タイタンがこちらへ向かってくるではないか。
タイタンは、ゼウス信仰が確立する以前の、古い時代の自然神であり、ゼウスたちとの戦いに敗れた後、地底に閉じ込められたとされている。
そのタイタンが、なぜ、京都四条にいるのかというと、それは私にもわからない。
そんなことを考えている間にも、タイタンは止まることなくこちらへ近づいてきている。巨体を揺らし、狭い路地を無視するように辺りの家々を踏み潰し迫ってくる。柳田おばさんの家も、猪上おじいさんの立派な家も、タイタンの一踏みで一瞬にしてなくなってしまった。
私は、呆然としていた彼に、危ないから逃げるように促すと、
彼はゆっくりとうなずいた。
ギアをバックに入れ、アクセルを勢いよく踏むと、
タイヤはキュルキュルと音を立て、私たちの体は前方へ強く引っ張られた。車は細い路地を塀にぶつかりながらも、猛スピードで四条から三条へと走り抜けた。
三条を通り越して二条まで逃げてきた私たちは、
まだ、自分たちの目の前で起こったことが理解できないまま、とりあえず、近くのコンビニで缶コーヒーを買い、再び車へ乗り込んだ。
沈黙が続く中、缶コーヒーのタブを開ける音が二回鳴る。
これは、夢か。いや、夢ではない。現実だ。
あれは、作り物か何かか。あの巨大さと動きからそうとは考えれない。
あれは、タイタンだ。巨神タイタンだ。
しかし、なぜタイタンが京都に。何か忠告しに来たのだろうか。
私はまだ自分が見たものに対して半信半疑だった。
でも、よく考えてみると、この世の中は不思議なことがいっぱいだ。
そうだ、私たちの出逢いだって奇跡みたいなものだ。
先月、二人で行った祇園祭。そこには四十万人五十万人と人がいて、
こうして二人が出逢えたのも不思議なことだ。
数十分前の出来事による興奮のドキドキが、私を彼に甘えたい気にさせていることに気づいた。
「はぁ〜、びっくりしたね・・・」
少し甘えるように彼の肩に寄りかかると
彼は、ゆっくりとうなずき、
ギアをバックに入れ、アクセルを勢いよく踏むと、
タイヤはキュルキュルと音を立て、私たちの体は前方へ強く引っ張られ、
車は細い路地を塀にぶつかりながら、猛スピードで二条から一条へと走り抜けた。
「この辺でいいよ」
私の家の周りは細い路地で入りくんでいて、軽自動車が通るのがやっとだ。車は中途半端な位置で右寄りに止まった。
「今日はありがと」
私は、買ってもらったピアスに手を触れた。門限の夜十二時五分前、私が車を降りようとして、それと同時に、彼が何かしゃべろうとした時だった。
それは、突然の出来事だった。
タイタン
巨神タイタンだ
フロントガラスの向こうにタイタンが現れた。
ギリシャ神話のタイタンだ。タイタンがこちらへ向かってくるではないか。
タイタンは、ゼウス信仰が確立する以前の、古い時代の自然神であり、ゼウスたちとの戦いに敗れた後、地底に閉じ込められたとされている。
そのタイタンが、なぜ、京都四条にいるのかというと、それは私にもわからない。
そんなことを考えている間にも、タイタンは止まることなくこちらへ近づいてきている。巨体を揺らし、狭い路地を無視するように辺りの家々を踏み潰し迫ってくる。柳田おばさんの家も、猪上おじいさんの立派な家も、タイタンの一踏みで一瞬にしてなくなってしまった。
私は、呆然としていた彼に、危ないから逃げるように促すと、
彼はゆっくりとうなずいた。
ギアをバックに入れ、アクセルを勢いよく踏むと、
タイヤはキュルキュルと音を立て、私たちの体は前方へ強く引っ張られた。車は細い路地を塀にぶつかりながらも、猛スピードで四条から三条へと走り抜けた。
三条を通り越して二条まで逃げてきた私たちは、
まだ、自分たちの目の前で起こったことが理解できないまま、とりあえず、近くのコンビニで缶コーヒーを買い、再び車へ乗り込んだ。
沈黙が続く中、缶コーヒーのタブを開ける音が二回鳴る。
これは、夢か。いや、夢ではない。現実だ。
あれは、作り物か何かか。あの巨大さと動きからそうとは考えれない。
あれは、タイタンだ。巨神タイタンだ。
しかし、なぜタイタンが京都に。何か忠告しに来たのだろうか。
私はまだ自分が見たものに対して半信半疑だった。
でも、よく考えてみると、この世の中は不思議なことがいっぱいだ。
そうだ、私たちの出逢いだって奇跡みたいなものだ。
先月、二人で行った祇園祭。そこには四十万人五十万人と人がいて、
こうして二人が出逢えたのも不思議なことだ。
数十分前の出来事による興奮のドキドキが、私を彼に甘えたい気にさせていることに気づいた。
「はぁ〜、びっくりしたね・・・」
少し甘えるように彼の肩に寄りかかると
彼は、ゆっくりとうなずき、
ギアをバックに入れ、アクセルを勢いよく踏むと、
タイヤはキュルキュルと音を立て、私たちの体は前方へ強く引っ張られ、
車は細い路地を塀にぶつかりながら、猛スピードで二条から一条へと走り抜けた。