鉛筆を持って答案用紙に回答を記入する右手をスケッチする
もう一本の鉛筆を持った左手を
慣れない手つきでスケッチする自分の姿を
見つけた試験監督が「こらーテスト中に何やってるんだー」と怒鳴る姿を
不意に教室の外からのカメラが引きの画で捉えると
この監獄みたいな学校でそのような行為をして怒られているのは
一人や二人ではなくそれこそ各教室に確実に数十人の単位で
不穏分子として各々のレジスタンスを行っているように見受けられて
そんな様子を市教育委員会のお偉方は
憎々しげにモニター越しに見守っているが
実はそれと全く同じ構図が
県教育委員会や国家教育委員会でも繰り広げられていることには
とんと想像が及ばぬのだ
世界の暫定チャンピオンであろう米国の某大統領も
このスケッチ行為に頭を悩ませているのは皆の記憶にも新しいこと
しかし見よ
常に木星と土星の間あたりに位置するあの土蜘蛛色の眼球
彼もまた我等を見張りまた見張られ
外に位置する領域を認識できないまま
恒久的な内閉性を志向する増幅装置
一刹那にして
10の何乗程の回数が繰り返されたか
それを知る由もなく
あてどもなく円錐形絶対宇宙卵を求めて彷徨う
絶対的質量を伴うひとつの炸裂回蟲・精子
全ての記憶を胚胎しているそれがあるとき突然動きを止めた
まきますか まきませんか
まきますか そうですか ありがとう
というわけで私の左手はねじを締めると
少しくしびれるようになったのです
「時間だ。03115136号。外に出ろ」
「ヤァ今日はいい天気なのでしょうね。風があたたかい」
「私語は禁じられている。さっさと歩け」
「このようなプリティでストレンジなビューティフルワールドに
生まれついた私は本当に仕合わせなのでしょうね」
「喋るな」
「いつだって、死ぬにはいい日だ。惜しすぎる。この豊穣な」
「黙れ」
「ザ・サンシャイン・アンダーグラウンド」
願わくば、21世紀の夜明けから既に10年が過ぎたここへ
ここから共に歩き出さんことを