「おめでとうございます!2等です!香取くんの等身大フィギュアを差し上げます!!」
またか、と僕はため息をついた。僕が欲しいのは草彅くんなのだ。家には今、キムタク、中居くん、吾郎ちゃん、香取くん×13、香取くん(水着)、香取くん(入院)、香取くん(アイスの蓋を舐める)などがある。我が家のSMAPは香取くんが最大勢力という、本来あってはならない状態だった。そんな事情は知るわけもなく、店員さんは奥でフィギュアを組み立てていた。自転車でどうやって持ち帰ろうか、などと考えていたとき不意に肩を叩かれた。
「よろしければその香取くん、私のコレクションの中から交換しませんか?」
振り返るといかにもSMAPファンという年齢の女性だった。なんて優しい人なのだ。露骨に落ち込む僕を見て、気をつかってくれたのだろう。ご好意を無碍にすることもないので、ここは二つ返事で承諾。家に香取が余っていること、草彅くんが不足していることを伝えると女性は目を輝かせた。女性宅では草彅くんが余っているらしく、なんでも逮捕されてからずっと処分したかったのだとか。女性と連絡先を交換すると次の土曜日に受け取る約束をした。女性は徒歩で来ていたので、今日貰った分は僕が持ち帰ることになった。高揚感のおかげか、ペダルが軽い。彼女には家にある1番綺麗なものをあげよう。香取を自転車の後ろに結ぶと、引きずりながら帰路につく。小石にぶつかって跳ねる香取くんは、なんだか嬉しそうに見えた。