「雪、あっちでも降るのかな」
彼女がつぶやく。冬。夜。雪の降る闇。ホームには、そろそろ最終電車が着く。
「そんな顔しないでよ、向こう行っても連絡するから」
笑った彼女の目は、すこしの寂しさと、都会への希望をたたえていた。こんな日に限って時刻表通りに来るものだ。軋みを上げて止まった電車に、それじゃあね、と乗り込む彼女。
ああ、お別れだ。君と僕は、ちがう人生を歩む。いつからか気づいてた。同じ目線で笑っていても、君の目の先には僕よりずっと広い世界が広がっていて。一緒になれるはずなかった。別れる運命だった。それでも、それでも。
「あのさ、ずっと、好きだったんだ、ずっと」
電車のドアが閉まる。
必死に絞り出したその声は、彼女の耳をつるりと滑って、届かなかったようだ。
たくみくん「そういえば、摩擦ねえのに電車止まってんな!!」