この手帳を読んだ皆さんへ
「下手な鉄砲数撃ちゃ当たる」という言葉を皆さんは知っているだろうか、下手な鉄砲でも何発も売っていればいつかは的に命中するということだ。
僕の推理はそれを利用している。
容疑者が8人いたとする。8人を別々に一人ずつ呼び出し、それぞれに「犯人はお前だろう」と告げる。「僕にはすべてわかっているんだ、もう君はお終いさ」と告げる。うまくいかない事もあるが、たいていそれで本当の犯人は自白し始める。犯人は誰かに言いたくて堪らなくなっているからね。そういうものなんだ。
それで2回に1回くらいの事件は解決できる。トリックも犯人自信が説明してくれる。言いたくて仕方がないんだろうね。
解けない事件もあるがそんな事はどうでもいい、次の事件現場に向かうだけさ。数撃ちゃ当たるだ。
解決率は悪いが解決数はトップクラスだ。
いちいち考えてる探偵はたまに馬鹿なんじゃないかと思う、実際馬鹿なんだろうね、推理馬鹿だ。趣味なんだろうね、職業として仕事としての探偵なら絶対こっちのほうが効率が良い。まあそんな事はどうでもいい。
一つ危ないことがある。このやり方だとね、犯人と一対一になったとき、殺されそうになる事があるんだ。
証拠隠滅のために僕を殺そうとしてくるんだ。
自衛のために僕はスタンガンを持っている。何人かには泡を吹かしてやったよ。
だけどうまくいかない事もあるはずだね。
皆さんがこの手帳を読んでいるということは、そのうまくいかなかったときで、僕はもうこの世にはいないという事だろう。僕は殺されたらしい。
今回の事件も容疑者の名前はこの手帳に羅列してあるはずだ。犯人はその中にいる。
(探偵は自分の事務所で自殺しているところを発見された。手帳とは別に遺書もあったのでそれも載せておく)
手帳の最後に書いてあることは、今回の死とは関係ありません。自殺です。数撃ちゃ当たる方式は苦情が多く、悪い評判がたち、事件現場に入れてくれなくなりました。生活ができません。手帳の最後に書いたことが恥ずかしくてたまりません。だから死にます。手帳を処分してから死のうと考えましたが、なぜ死んだかを知って欲しくてあえて遺しておきます。僕は恥かしさの為に死ぬのです。僕は恥かしさの為に死ぬのです。お父さん、お母さん、ごめんなさい。僕は死にます。恥ずかしいので死にます。
ごめんなさい。
(ただし手帳とは筆跡が少し違う)