「ユリカ。ちょっといいかしら」
「なんですのお姉さま?」
「先日いらっしゃった男爵のご子息様。あの方をどう思います?」
「べ、別にどうとは思っていませんわ。男性としてはまだまだです。少なくとも私とは不釣合いなほどに……」
「へえ? 私はただ単に『人となり』を尋ねただけで、男性としてどうかとは聞いていませんわよ?」
「あ……」
「可愛らしいこと」
「……お姉さまのいじわる」
「ふふ。私から見てもあの方は良い方だと思うわ。男爵家特有の嫌味な上昇志向も感じませんしね」
「?」
「男爵家は爵位が最も下でしょう? それでいて、実業家等の財界に力を持つ方が多い。
時々いるのよ。上の爵位と政略結婚して『名』も上げようとする御方が」
「あのお方にはそれが無い、と?」
「ええ。名に頓着がないと言うべきかしら。名は男爵位なれど中身は公爵位の気品。そんな印象を受ける立ち居振舞いでした。
だからこそ、名で軽んじられるのが惜しい方ですわね」
「……」
「もっとお付き合いしてみれば、多くのことが分かるかも知れないわね」
「……お姉さまがお勧めるになるなら」
「素直じゃない子ねぇ」
「お姉さまのいじわる」
「良いわ。じゃあ今度の土曜、お茶にお誘いしましょう、かのアホール様を」 ←1点獲得