「起きてますか」
言葉は闇に溶け、聞こえるのは虫の声だけに。夜空を見上げてみた。星が綺麗だった。体に染みついた血の匂いは、いくら洗っても消えない。もう慣れた。
この戦地に派遣され約半月、顔も名前もわからない敵を殺し、顔も名前もわからない味方が死んでゆく。それがただただ繰り返されていた。
敵の頭を撃ち抜き、よし、と思っている自分は本当に人間なのだろうか。
こんな自分を、家族は同じように愛してくれるのだろうか。
こんな自問自答は無駄なのかもしれない、だが答えが欲しかった。
「ボブさんは、家族はいるんですか」
沈黙
「この戦争……終わるんですかね」
沈黙
「俺、自分が怖いんですよ」
沈黙
「こんだけ人を殺して、それで英雄気取りとか」
沈黙
「もう嫌なんです……!」
沈黙
「ボブさん……俺に生きて帰る資格なんてあるんですかね」
(写真)
「ははっ 殴りてぇや」