「みんなー!人形劇がはじまるよー!」
フンフフンフフン♪
フフフフンフンフンフフン♪
フフフフフフフフフフフフン♪
フヌヌェルラピ ヌ♪
「はーい、尋常小学校のみんなー!こんにちはー!
尋常じゃなく元気がないなぁー、パンダくんも元気でないよぉ?
お姉さんとパンダくんは今日、みーんなと友達になりにきたんだよっ!
ヌアアアアアアアアアアアアアアア!」
ビィッ
まただ。またやってしまった。
精神的な弱さもあるのだろう(来年の夏からは病院に行きます)。私は営業先の子供達のテンションが低いと、男のような声を出しながら手にはめた人形の頭をもいでしまう癖があるのだ。
左手にはめたパンダの胴から細長い指が3本生えている。
パンダだった何かの胴体はポップな服を着ていて、この人形はもはやポップな服を着た指だった。このパンダ改め指は指のゆびくんと紹介して乗り切ろう。
「今日はみんなと仲良くなりにきたお姉さんとー!」
「ぼくは指のゆびく・・・・」
待てよ。パンダだったそれは男の子の設定で中世的な声、自分をぼくと呼ぶキャラクターだった。
しかし指は自分の事をぼくと呼ぶのだろうか。指の性別とはなんだろう、声っていうか心に入ってきて直接話しかけるのではないか。
もう迷っている暇はなかった。何時間に感じられる一秒の中で私が思いついたのは
パチン!パチン!
(ゆびくんとは、頭の人差し指と薬指をすごい勢いで中指にぶつけて音を出しコミュニケーションをとるキャラクターである。)
これしか方法はなかった。
これで全て乗り切ろう。
今気づいた。おじぎが超やりやすい。
夕方、私は整形外科の帰り道にいた。
慣れない指の運動が災いし、指が開ききって戻らなくなってしまったのだ。
怪我自体は大した事なく放っておけば治るものだったらしいが、あまりの痛みに「ピィ!!」という関係ないセリフを発し続けたので続行は不可能。劇は強制終了という形をとることになった。
病院に行くのが早くなってしまったな。
私はパンダの頭を左手で揉みながら土手を歩いていた。