小学生のときに買った辞書が本だなに飾ってあった。おれは犯罪を重ねて、とうとう明日で還暦を迎える。
もう、犯罪も定年退職かな・・・
そう思ったとき、逮捕状をもった警察官が、どやどやと部屋に上がりこんできたのである。オレはマユゲ一つ動かさず、それを受け入れている。オレの犯した罪は全て完全犯罪だ。しっぽを掴まれるヘマなどしでかしているはずがない。
するとあるベテランっぽい刑事が嘘発見器の準備をはじめ、
「任意でですがここ座っていただきたいのですが?」
と言ってきた。
「いいだろう!」
と答えると、オレはその嘘発見器の前に座った。
その刑事は最初の質問で、おれを和ませるために、こんな質問をしてきたのである。
「その本棚の辞書は、新品ですか?」
オレは動揺した。そういや人生で一度もこの辞書をつかったことがなかったな・・・
ははは、これはまいった。
いい、これでいいのだ
そうして私は自首(じしょ)することに決めたのだった・・・