学生「大家さん、やっぱり僕この部屋にしますよ」
大家「えっ、本当に!?」
学生「他の部屋より家賃も安いし、苦学生にはちょうど良い部屋かなって」
大家「そうかー……でも、ここはちょっと『出ちゃう』部屋なんだよね」
学生「霊とかですか?僕、そう言うのは信じないから大丈夫です」
大家「いやいや、霊じゃなくて薬味マンがね」
学生「薬味マン!?」
大家「うん、窓から入ってきて、ヨレヨレ飛びなから色んな薬味を食卓の上に落としてくるんだ」
学生「薬味って、蕎麦とかうどんにかけるアレですよね?」
大家「薬味マンはナポリタンにも刻みネギとか鰹節を落としてくるそうだよ」
学生「……それは大分合わないですね」
大家「そこらへんも考慮して住んでくれるって言うならありがたいんだけど」
学生「うーん……」(何言ってんだこの人)
パラパラッ
学生「あっ、今頬にぽつっと……」
大家「来ましたね、もみじおろしが」
薬味マン「やぁ、新しい住人」
学生「うわっ、いつの間にか天井すれすれを何か飛んでる!」
大家「ウチのマンション、天井に力入れてないから普通に手が届くね」
薬味マン「そこは何とかして欲しい」
学生「そんな事より貴方が薬味マンですよね。止めてくださいよ部屋に入ってきて薬味落とすなんて!」
薬味マン「それはできない。君のように、いかにも質素な食事を作りそうな人に薬味を提供してあげる事が私の使命なのだ」
薬味マン「このヨレヨレっと飛ぶ力を持つまでは実行できなかったがね」
学生「薬味ばらまかれても、質素さはそんなに補えないですよ!そんな心配してくれるなら、普通に一品おかずが欲しいですって!」
薬味マン「甘えるな、嫁に逃げられて一品欲しいのはこっちの方だ」
学生「うわっ、素が見えた」
大家「はは、二人は仲良くなれそうじゃないか、さぁ契約しましょう」
学生「ちょっと焦ってますよね大家さん」
薬味マン「……ふむ、まだ私の好意を理解できないようだな。それでも一向に構わない。ただ、この部屋に住むならこれだけは言っておこう」
学生「はぁ」
薬味マン「今後は和食中心にした方が賢明だ」
学生「他探します」