「ひっくっ……ひっくっ……」
嗚咽を漏らすボクの目の前には粉々に割れた花瓶があった。
確かおじいちゃんが飾っていた骨董品だ。
特別に高いというわけでは無いが、友達からもらったもので凄く大事にしていた物だった。
「ほら言ったでしょう。廊下は危険だから走っちゃいけないって」
おばあちゃんが優しい声でボクを叱る。
「かわいそうだけどね。こういうのはキッチリ叱っておかないと、まーくんが大人になった時にもっとかわいそうな事になるからねぇ。
躾をしなくちゃいけないよ。いいね?」
「うっ……ひっくっ……」
ボクは無言で頷く。
いつもニコニコしてるおばあちゃんに叩かれるというのは正直怖かった。
だけど、おばあちゃんの顔がとても優しかったから。
ボクはおばあちゃんに『躾』をされる事を了承した。
それは人としてのケジメをつけるとかの話しではなく、
ただひたすら、おばあちゃんに謝りたい一心だった。
「それじゃあやるからねぇ。痛くても我慢するんだよ」
そう言うとおばあちゃんは、ボクを裸にして麻縄で縛り、盛大にムチを振りかぶった。