私「あれ、この猫両手を上げてる。珍しいなぁ」
その猫は I を招く
店主「その猫はね、僕の父親の形見なんですよ……。親父は小さい頃に口減らしで里子に出されてこのラーメン屋に来たんだ。幸い店主に好かれて後を継いだんだが、親父は母親を忘れられなかったんだろうね。猫がお客と同時に母親を招いてくれるようにってんで、ずっと大事にしてたんですよ……」
その猫は 哀 を招く
私「私の祖母は死ぬ間際にこう言ってました。『ラーメンが食べたい。あの子が作ったラーメンが食べたい』って……。ずっと疑問だったんです。『あの子』って誰なんだろうって……」
その猫は 遇い を招く
店主「おっと、長話をしてたら終電が出ちゃいました。家まで送りますよ。ご自宅は近くですか?」
私「いえ……。ご迷惑でなければ、もうちょっと話を続けていただけませんか」
店主「いや、それはいいんですが。もう親父の話は全部話しましたよ。これ以上特に話す事なんて……」
私「いえ……、今度は店主さんのお話をしてくださいませんか。私、まだ名前も聞いてないんです。私は店主さんを名前で呼びたい……」
その猫は 愛 を招く
店主「後悔……して無いな?」
私「ええ……『あなた』」
その猫は 相 を招く
店主「てやあっ!」
――― スッ スッ スッ
私「凄い! チャーシューが一瞬でバラバラに」
店主「ようやく習得できたか……秘剣『居合い叉焼瞬斬刹』」
その猫は 居合い を招く
私「大変よあなた! 店に猿の群れが攻めてきたわ!」
店主「くそっ! お前らなんて蹴散らしてくれるわ!」
その猫は アイアイ を招く
私「あなたっ! しっかりしてっ! お願いだから死なないでっ!」
店主「すまない……もう俺はダメだ…………。子供の顔が……見た…かっ……た……」
私「あなたぁーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」
アイアイ「ウキキキキーーーーーーーーーーーーーッ!」
その猫は再び 哀 を招いた