思わず我が目を疑った
そこには以前、映像資料として見たのと同じ大柄な男が立っていた
ベーブ・ルースである
彼が何故ここへ?
現在時刻は14時、とっくに試合は始まっている
私は彼に尋ねてみた
「やあ」
「やあ」
「こんな時間に何処へ行くんだい?君はボンバースの選手じゃないか」
「ああ、コンドームを買いにね」
なるほど、と思った
なにしろ我が国を代表するスラッガーだ
地元で買うのはさすがに恥ずかしいらしい
彼は続けてこうも言った
「僕が緊張しているのがわかるかい?実は地下鉄は初めてなんだ」
どうでもいい、と思った
なにしろ我が国を代表する短小男だ
「サガミ スモール ごくうす」と書かれたメモを何度も見直している
彼は地下鉄に乗り込んですぐにこう言い放った
「ああ、ウチの家内よりは乗り心地がいいや」
チャンピオンリングはホームの隙間へそっと落とした