「全く売れなかった液体洗剤のキャッチフレーズとは!?」
頓狂な声の明るさからは想像もつかない、
白い能面のような顔をしたセールス・マンふうの男の突然の質問に
俺は戸惑いを隠さなかった。
何だって、マンガ喫茶で相席になっただけの
初対面の男にそのようなつまらぬ問いを
投げかけられねばならないのか。
――射殺するか。
確か車のトランクに、来週の狩猟解禁日の為に街の
ドラッグ・ストアで購入した散弾銃が置いてあったはずだ。
そんな俺の黒い衝動を、赤い、赤いアイツ。
この街一番の赤シャツを決めたアイツさ。
トビキリ。の赤シャツ。
高校時代にお世話になった恩師の顔を脳裏に浮かべながら
力の限り殴った。こぶしが固く、引き締まる音がするような気がする。
歯が溶けている時代を代表する
ヤング・ジェネレーションに注意だ。奴たちに風は吹いてこない。
セールス・マンふうの胸ポケットから干し肉。レーズン。ひまわりの種
などの乾きものが、散乱。
それが何となく「四十にして惑わずの境地?みたいな?」
と俺よりも5〜6歳は年下そうに見えるマヌケヅラの癖して
老境に達した禅僧めいた事を
云っている様に思われて仕方なかったので
むっかっつっきゃああああああって衝動はリミットレスビッドに達し
傍にあったサーベルでタイガー・
ジェット・シンのようにグサーって殺。
海っぽくあやとりの紐っぽく飛び散る何か赤いたくさんの。
今日の日本経済・政治状況を鑑みるに、無礼な奴に対する礼として、
それくらいの非礼は許されている筈だ。
店内に流れるインストゥルメント・ミュージックが
心を涼やかにさせるのに大変役立った。
「金一封
を贈りたい気分です!」
さわやかな面持ちでそう宣言すると、店中の客から沸き起こる歓声。
確か市の広報に載っていたと思う。狩猟解禁日。