寝室にある俺だけの孤独なパン屋
……
早速潜入したいと思います…
そこのベーコンとほうれん草のパンには、母さんの病気を治せる伝説の薬草が紛れているらしい
ん?なにやら店の奥から声が聞こえるぞ?
……
ゲンドウ「シンジ、パンを作れぇ」
シンジ「生地を見ちゃダメだ、生地を見ちゃダメだ…!」
レイ「こねれば、いいと思うよ」
大学生「大学生はパン屋というもので働かなければならない」
Gカップ「はあ~パン屋で働いていた経歴を持つグラビアアイドルになりたいな~」
ゲンドウ「ブーッ!(鼻血)」
まあそんなこんなで俺はパンが嫌いなのにパン屋で働くことになった
寝室にある俺だけの孤独なパン屋
……
早速働いてみます…
季節は一巡した
秋はまた次の秋へ
母さん、俺はまだ働いてるよ
このパン屋ならきっと見つかる
なんのために生まれ、何をして生きるのかが
もちろんあの薬草もね
俺はパンが嫌いだから
廃棄のパンとネズミの死骸をトレーに横並びに置いて眺める
その時間だけが幸福だった
何度もバイトを辞めそうになった
しかし、嫌いという感情だけでパンは断ちきれるものじゃない
断ちきるのはパンの耳だけでいい
現実から目をそらすな
焼いている途中のパンからも目をそらすな
パンのこともっといっぱい考えたいよ
ねえ、パン、パン!
「嫌い」という感情で心を埋め尽くして「母を殺したい」という感情を殺す
パンのこと嫌いパンのこと嫌い!
もっともっと!パンのこと嫌いになれば
母さんのこと許してあげられるかな?
1から全てをやり直したいよ
ねぇ母さん聞こえてる?
俺はパンが嫌いだよ
母さんのことも嫌いだよ
妹は寝たきりのあなたを置いて逃げた
家族はもう元に戻らない
でもパン屋で働き続けるよ
だってあの薬草があれば母さんの病気は治って
そしたら、妹もきっと帰ってくるはずだから…
濡れたティッシュでゴミ箱がいっぱいになった
あれ?
そういえば今日、廃棄で捨てたベーコンとほうれん草のパンに見覚えのない葉っぱが…
急いで寝室に行く
孤独なパン屋の中に入ると、ゴミ袋を持って裏口の方へ歩く店長の後ろ姿が見えた
「待ってください、店長!…いや、、父さん!」
ゲンドウ「…そう呼ばれるのは久しぶりだな」
「そこに入ってるほうれん草のパンを持って帰りたいんだ」
ゲンドウ「これか、ずいぶん汚くなっているぞ」
「いいんだ、父さん。ありがとう」
ゲンドウ「そうか、じゃあまた明日もよろしく頼むぞ」
「父さんは戻ってこないの?」
ゲンドウは黙る
「父さん、一緒に帰ろうよ。いつまでここにいるつもりなの?もう戻ってきなよ」
ゲンドウ「サエコは、まだ寝てるのか」
俺はベーコンとほうれん草のパンを強く握りしめた
「ううん。起きるよ」
シンジ「父さん!パン作れたよ…!って、この人誰?」
ゲンドウ「お前の兄だ」
シンジ「なんで?僕は一人っ子のはず」
ゲンドウ「私の隠し子だ」
シンジ「嘘だーーー!」
シンジはパンになった
その後、母さんは薬草で目覚めた。お腹を空かせていたのでパンとシンクロしたシンジを食べさせた
寝室から孤独なパン屋はいつの間にかなくなっていた。その跡地にはキスマークと共にこんなメッセージが残されていた
「お世話になりました~」
くーっ!Gカップの野郎…!