長髪の球児が甲子園で起こした奇跡は世直し一揆に近い。あの日陽射しを割って出てきたのは若かりし日の桑田真澄であったが、髪がふさふさで長髪だった。おまけに鼻が縦に長かった。暇人だったので来て、そのまま帰ろうとしていた。
その場で桑田は歯を抜こうとしていた。邪魔であったからだ!チキンを食べるのに。チキンは歯茎でむしって食べた方が健康的でいいんじゃないか?桑田はそうまで考えていた。暑さでやられたのだ。
マウンドはかんかん照りで、もう37度を超えていた。ヘルメットの中はもっとまずい、桑田の中で自らの長髪はサウナに使われる白樺の枝に変換された。
うーん。どうにかして帰れないか。マウンドからベンチは遠くて、ベンチから出口はもっと遠い。多くのチームメイト(どこから来たのだ?)にも止められることを考えるとしょんぼりしてしまった。投げる気にはなれないけれど、どうにかやるしかないのだ。桑田は考える。最高の投手だ!最高の投手というものは、頭で勝つ、コントロールで勝つ、そして最後は、意地で勝つ。そういうものなのだ。
桑田はヘルメットを脱ぎ、頭を振り回し、ボールを投げた。その投球を、どうにか上手いこと、髪の毛で隠してみようという算段だった。
桑田が振り上げた髪の毛は意味不明だったので、近場を通った宇宙人に掴み上げられ、その宇宙人はNASAに追われていたので、そのまま11tのクレーン車で引き上げられた。今でも桑田真澄は、宇宙ステーションの中で、宇宙人と共にガラスの中で保管されている。