ー20XX年
「ハァ、ハァ…」
(かれこれ何日も歩き続けているが、人ひとり見当たらない。このままでは残り僅かな食料も底をついて、力尽きるのも時間の問題…)
「ヴィーン…ヴィーン…」
「だ、誰かいるのか…!」
「イラッシャイマセ‼︎」
「こ、これは…!」
「オスシヲ、ニギリマス‼︎」
「なんだ、人間じゃないのか…」
(ようやく人の影が見えたかと思えば、ただの寿司が握れるロボットか…)
「ん、何だこれ」
(もしかしてこのタッチパネルを押せば、寿司が出てくるのか?)
〈ポチ〉
「ヴィーン、ガチャンガチャン……ヘイオマチ!」
「こ、これは…!」
(正確な動きに反して、シャリはおろかネタひとつ存在しておらず、その手は虚空をかすめるばかり…)
「…オスシヲ、ニギリタイ」
「えっ」
「…オスシデ、ミタイ」
「えっ」
「ミンナノエガオ」
「……」
「……」
(まさか、人を笑顔にするために寿司を握るプログラムが組み込まれているせいで、人類が滅んでも寿司を握り続けているロボット!?)
「エガオ」
「…わかった」
(こんな危険を冒すのはどうかしている。でも、)
「コーラとメントスだ、これを使え」
「ニギレル……? オスシガ、ニギレル……‼︎」
(そこにはかつて盛況していた店の風景と、人々に囲まれて意気揚々と寿司を握る一体のロボットの姿があった)
「ヴィーン、ガチャンガチャン……ヘイオマチ!」
〈ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ〉
「……オスシ、オイシー?」
「ああ、うまい…………(ニコッ)」
「オスシ、オイシー‼︎ オスシ、オイシー‼︎」
「…………」
「…」
.
.
.
「イラッシャイマセ‼︎」
「オスシヲ、ニギリマス‼︎」
ロボ寿司レストランでは、今日も、寿司を握り続けている。