事故で記憶を失ったジェフ。
家族や我々の努力虚しく、彼の記憶が戻らないまま4年の歳月が経過した。
ある日、私は彼を連れてドライブに出かけた。
途中にあったガソリンスタンドに立ち寄ると、彼は急に頭を押さえ、苦しみ出した。
事故以来、初めての事であった。
ジェフに問いかけるが、彼は以前苦しそうな顔をしている。
彼が悶えている理由は分からないが、何かが彼の記憶の奥底を偶然刺激したのではないかと考え、私は尚問いかけた。
「ジェフ、何か思い出せそうなのか」
ジェフは荒い鼻息交じりにこう始めた。
「頭が、痛い」
知ってる。君が頭痛いのはもう知っている。
私も医者だ。側頭葉の付近を押さえている為、何らかの記憶に関連した痛みであるという推測も済ませていた。
続けてこう問いかける。
「ジェフ、ここを覚えているのか」
少し落ち着いてきたジェフはこう続けた。
「頭が、本当に痛かった、落ち着いた。」
なんだコイツ。でも落胆してはいけない。
私は諦めずに問いかける。4年間そうしてきた。
「ジェフ、落ち着いたかい。色、形、匂い、何でもいい。何が一番気になるんだい。」
「おせね…」
「え?」
「ENEOS、並び替えるとOSENE、おせね…」
私はジェフを置いて出発した。