あなたの今のネタ
「はい」
『もしもし? 田中さんですか?』
「田中という名字は割と多いので確証は得られません。そもそも田中じゃありません」
『あら!! ごめんなさい間違えたわ』
「もしかしたら田中なのかもしれない。順番を変えたら中田ですし。中田じゃありませんけどね」
『へ!? 順番を変える必要はないんじゃないですか?』
「わかりませんよ。なかむらたろう という人が居たとして順番を変えれば たなかむらろう ほら、大事でしょう?」
『は、はぁ。でもあなたは違うんですよね?』
「今現在は違います。でもいきなり母親が出てきて「ごめん、今までどっきりだったの。本当は田中だから」と言われるかもしれない」
『そんな珍しい状況ないと思いますけど……』
「奥さん、あなた今、ない、と断言しましたね? 本当にないと断言できますか? 100%違うと言い切れるんですか!!」
『ご、ごめんなさい、もしかしたらあるかもしれないです!!』
「わかってもらえましたか!! それでも田中じゃないんですけど」
『もうあなたが田中じゃなくても気にならないわ』
「そうですか。それじゃあ奥さん、今夜9時、駅前でどうですか」
『わかったわ!! 楽しみにしてるわね!!』(ピッ!!)
男の顔が奇妙に歪んだ。
彼方村郎最初の大一番であった。