明日は遠足の日だった。でも、天気予報では一日中どしゃぶりの雨。
二時間ばかり前に連絡網で、遠足の中止が決定したらしい。
古新聞とティッシュを組み合わせて作り上げたてるてる坊主は、寂しげにAM1:00の夜空をベランダの裾野(すその)から見上げている。
雲ひとつない大空で星の瞬きも数少なく、煌々と満月だけが笑う。
今はこんなに快晴だというのに、明日は雨が降るのは、僕の、いや、ぼくたちの日頃の行いが悪かったからなのだろうか。
とにもかくにも現実というのはとても過酷で残酷なものだと思い知らされる。
亡くなった父は教えてくれた。生きるということはソコにあることだけと。世の中には、世界には嘘なんて一欠片もない、あるのは真実だけで、あるものは全て真実なのだ、と。
人間はとても弱い生き物だから、苛烈な真実からは目を背けてしまうことが多々ある。だが、それもまた真実になってしまえば、やはり嘘なんてあるわけがないのだ。
だからせめて、僕は立ち向かえと、父は言った。
だから、僕は受け入れる。
遠足が中止になる、師が、大人が決めた現実として僕の眼前に転がっている。
遠足(野外授業)は中止になった。それはもう良い。残念だけど仕方のないことだ。
矮小なぼく達が自然を相手に逆らおうとするのは、確かに馬鹿げている。
状況に左右されることこそが、人間らしさでもあるのだから。
都会で暮らすぼく達は、ここから遠く放れた自然に触れる機会は滅多にない。
だが、生きていれば、生き続ければその機会はやってくるのだから…。
僕は改めて明日の準備を整えるために、先日よういした野外戦用の装備を市街戦・対都市テロ戦闘仕様にするため、マスクなどを用意した。
コード「遠足」は中止、市街における局地的豪雨状況での対テロ実戦仕様訓練への変更。
手にとったCP−4の重さを噛みしめる。
状況の開始予定時刻は03:25。あと二時間ほど。
僕は父の形見のペンダントを首に下げた。
少しだけ仮眠を取ろう。明日はきっと忙しくなろうだろうから…。
僕は