葬儀が終わった真夜中が青いから泣いていた
ゆっくり近づいてきたその若くて美しい僧は卒塔婆を折って、
「戒名、浄土、祈り、想い、そういうものは本来この世に不必要なものです。只ね、亡くなった人が貴方にとって何かの形で大切な人だったなら、手を合わせてあげる、ということは、一人ぼっちで旅に出る友達に『またね』というくらい大切なことだと、私は思います。」
と言ってくれた。
「貴方はなんでお坊さんになったんですか?」
「家業だからですよ。」
若い僧は答えた。
よくわからないけど、寂しくて寂しくて、哀しくて、笑えてきた。
若い僧は煙草を吸った。
「意外ですか?」
「ええ。お坊さんが煙草を吸うなんて。」
「中学生の時、ブランキージェットシティのファンだったんです。頭丸坊主で毎日お経唱えて、掃除して、夜になったら部屋でブランキージェットシティのCD聞いて、そしたらなんだか、お坊さんもカッコイイかなぁって、なっちゃいまして。」
「ハハハ。」
「死んだら何もありません。煙草くらい、どうってことないでしょう。」
そう言って若い僧侶は僕にも煙草を勧めてきた。
「禁煙してますから。」
「僧侶が死んだら何もないって言ってるんです。この税金で、ひょっとしたら、本当にひょっとしたらより良い世界が来るかもしれない。」
消えかけた備え付けの線香で火をつけてもらい、僕は久々にラッキーストライクを吸った。
頭が痺れた。
家に帰ったら、ブランキージェットシティを聞こう。
CDまだあったっけ。
YOUTUBEでもいいか。
ああ、今、幸せかもしれない。
「それ、実は大麻ですけど、宗教施設に警察は簡単に踏み込んできませんよ。」
僕は小さくだけど、心の底から笑った。