「マツヤマさん、こっちです」
ふいに草陰からドイルが甲高い声で叫んだ。
電子手帳を持ったままマツヤマが近寄ると、そこには見渡すほどの空き地が広がっていた。
「おどろいたなあ、まだカワサキにもこんな土地が残っていたとは」
「これだけあればクリケットもフットボールも出来ます」
すぐに二人は自らの任務を全うすべく、重そうな計器を抱えたまま四方に散らばった。
自衛隊の若い将校と地方の独立警察が集団蜂起したのは八年前。
政界に強いパイプを持つ宗教が資金を後押ししていたとされ、現実的な武力に対抗する手段を持たない政府は
政治家同士の責任の擦り付けに終始し、皇居周辺の警備を増強するのが精一杯だった。